故・平良昌則(たいらまさのり)

沖縄の三線職人として知られる平良昌則(たいら まさのり)は、もともと大工棟梁として腕を磨いた職人でした。
木材の扱いに精通し、建築で培われた精密な加工技術と、木の癖を見抜く眼が、そのまま三線作りにも生かされています。

三線職人としての歩みは比較的遅いスタートでしたが、その細部まで行き届いた丁寧な仕事ぶりは早くから評価され、多くの演奏者・愛好家から支持を集めました。
特に棹の造形における手堅い精度、鳩胸の自然な膨らみ、そして均整のとれたフォルムは、まさに“元大工の職人技”が生んだ美しさと言えます。

平良昌則の作風は、大きく「素直で真面目な三線」と形容されることが多く、派手な装飾よりも、木材の性質と音の伸びを重視した一本が特徴です。
棹のラインは癖が少なく、演奏者を選ばない扱いやすさを持ちながら、しっかりと芯のある音を響かせる。
これは、素材選びへのこだわりと、一本一本の加工を決して妥協しなかった職人気質の賜物です。

また、平良氏の三線は全体として「素朴で温かみのある音色」を持つと評価されています。
皮張りとの相性を丁寧に見極め、棹の強度と響きのバランスを大切にしているため、古典や民謡だけでなくポップス・創作民謡にも合う懐の深い音が魅力となっています。

晩年までその品質は安定しており、現在は遺作としての価値も高まり、流通量も少なく希少性の高い三線となっています。堅実な木工技術と温かい人柄がそのまま形になった、平良昌則という職人ならではの一本。演奏者に長く寄り添う、信頼できる三線です。

050 上質黒木 与那城型 故平良昌則作

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